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5.過払い金返還請求
取引期間が長く、過去の利息が法定金利以上であれば、計算上過払い金が発生します。
経験上、大体7年くらいの取引期間があれば、過払いになることが多いようです。
しかし、4-5年程度でも過払いが出ることもあれば、10年でも過払いが出ないことも
あります。遅滞なく払っていたかどうか、毎月の返済額の多寡によって、元本の減り方
が異なりますので、一概に○年で過払いが出るとは言えません。
業者とは過払い金の金額で争うことになります。
過去の取引の途中に完済歴があれば、業者はその完済時の前後で取引が別であると
主張します。我々はそれぞれの取引がつながっていれば(一連と言います)、過払い
金の数字が大きくなるため、実態の調査に入ります。
分断や一連の調査ののち、業者との交渉金額が満足いくものでない場合、裁判になる
こともあります。裁判をせずに和解することもありますが、入金日や予想される裁判
の長さによっては、和解せずに裁判をした方がいいケースもあります。
これらの点を依頼者との間で話し合い、裁判で決着をつけるか和解するかを決めます。
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以下、過払い金返還請求で業者と争点になりやすい事項です。
【 分断か一連か 】
事実上1個の連続した貸付取引であると評価できるか否かの具体的な判断基準は、
以下のとおりです。H20.1.18最高裁の判決では、「特段の事情」と言われます。
1.第1の基本契約に基づく貸付及び弁済が反復継続して行われた期間の長さ
2.最終の弁済から第2の基本契約に基づく最初の貸付けまでの期間
3.第1の基本契約についての契約書の返還の有無
4.借入れ等に際し使用されるカードが発行されている場合にはその失効手続の有無
5.第1の基本契約に基づく最終の弁済から第2の基本契約が締結されるまでの間に
おける貸主と借主との接触の状況
6.第2の基本契約が締結されるに至る経緯
7.第1と第2の各基本契約における利率等の契約条件の異同
以上7つの例示列挙以外にも「特段の事情」と考えられる内容として、「管理番号、
顧客番号、契約番号の相違」が挙げられると思われます。
これら基準により、第1の基本契約に基づく取引と第2の基本契約に基づく取引とが
事実上1個の連続した貸付取引であると評価できれば、第1取引で生じた過払い金を
第2取引の貸付金に充当する旨の合意が存在するものとして、業者と戦っていきます。
裁判所が分断と判断すれば、提訴時から第1取引の完済時までが10年以上経過してい
た場合、第1取引の過払い金は消滅時効にかかりますので、請求金額は大幅に削られる
ことになります。そのような事情から業者の中には何が何でも負けまいと、大量の準備
書面を送ってくる業者もいます。
【 みなし弁済 】
みなし弁済についてはすべて業者が立証責任を負います。H18.1.13最高裁判決以降
は、普通に裁判をしていれば負けることはありません。しかし、それでも業者は執拗
にみなし弁済を主張しますので、過払い請求者として訴える側としては、きちんと準
備書面にて筋の通った法解釈をしなければ、勝てるものも勝てなくなってしまいます。
【 悪意の受益者 】
民法704条の悪意の受益者と推定をされれば、過払い金に対して、民事法定利率であ
る5%の利息を付して返還ができます。
H19.7.13最高裁の判決により、貸金業者が利息制限法1条1項所定の制限を超える
利息を受領したが,その受領につき貸金業の規制等に関する法律43条1項(みなし
弁済)の適用が認められない場合には,当該貸金業者は,同項の適用があるとの認識
を有しており,かつ,そのような認識を有するに至ったことについてやむを得ないと
いえる「特段の事情」があるときでない限り,民法704条の「悪意の受益者」である
と推定されます。
悪意についての立証責任は被告である業者にあります。17条書面(契約書)や18条
書面(領収書)が直ちに交付されているケースは少なく、仮に交付されていたとして
もその要件を満たしているかどうかもポイントになります。業者がこれらすべてを立
証するのは難しいと思われますが、それでも業者は大量(ダンボール1箱分くらい)
の17条、18条書面を送ってきたり(すべてがそろっているわけではありません)、
これら書面を発行していたと思わせるような社内の体制は整っていたとして、サンプ
ル書面を送ってきたりして、訴訟をいたずらに長引かせようとします。
H21.7.10最高裁の判決では、期限の利益喪失特約の下での利息制限法所定の制限を
超える利息の支払の任意性を否定した最高裁判所の判決以前に貸金業者が同特約の下
で制限超過部分を受領したことのみを理由に,当該貸金業者を民法704条の「悪意の
受益者」と推定することはできないとする言い渡しがなされました。そこで業者は、
期限の利益喪失特約についてのH18.1.13最高裁判決以前の取引について、5%の利息
を否定する準備書面を出してきます。
上記以外にも、時効、相殺理論、切替案件等で争うことも多いため、訴訟はどうして
も長引くことがあります。
訴訟が長引いている間に業者が倒産しては、取り戻せるものも取り戻せなくなるため、
そのまま判決を取りにいって、強制執行を武器に全額払わせるか、入金日が早いので
あれば、納得がいく和解金額にて、裁判の途中で和解をすることもあります。
ただし、廃業同然の業者のほとんどは、裁判で勝訴判決を取ったからといって、その
金額のすべてを払ってくるわけではありません。彼らには強制執行しても取れるよう
なものはなく、仮にあったとしても、財産隠しをされてしまい、銀行の支店名等の特
定が困難です。うまく特定でき、たまたまその口座に残金があったとしても、開けて
みれば数百円しかなかった等の結果に終わることもあります。そこで、そのような業
者は判決に対しては、開き直り、どうぞお好きにという態度を取ります。許せません
が、現在の法律ではこのような業者からすべてを取り戻すのは難しいのが現状です。
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