遺産分割協議を行なう者は、法定相続人であることはいうまでもないですが、特別な
場合には以下の者が遺産分割協議に参加します。
1 任意代理人
2 相続人の相続人
3 法定代理人・特別代理人
4 包括受遺者
5 相続分の譲受人
6 不在者財産管理人
7 破産管財人
8 遺言執行者
以下、特に問題となるケースにつき説明します。
1 任意代理人
⇒ 遺産分割協議は代理人によっても可能です。
⇒ 遺産分割協議書に押印するのは代理人であり代理人の印鑑証明書及び代理権限
証書(委任者の印鑑証明書付)が必要となります。
2 相続人の相続人
相続人の相続人というのは、被相続人が死亡し、遺産分割協議をする前にその相
続人たる子が死亡してしまったという場合です。この場合にその死亡した子の相
続人が子に代わって遺産分割協議に参加することになります。
3 法定代理人・特別代理人
(1)未成年者
親権者が共同相続人でない場合には親権者が未成年者を代理して遺産分割協議を
することで問題はありませんが、親権者が共同相続人である未成年者とともに遺
産分割協議をすることは利益相反行為になりますので、親権者はその未成年者の
ため
家庭裁判所に特別代理人の選任を請求することになります。親権者がこれを
怠っている時には他の共同相続人もその選任を請求することができます。
(2)胎児
胎児は相続に関しては生まれたものとみなされるが、遺産分割協議の当事者とは
なれません。
胎児の母は胎児の法定代理人として遺産分割協議を行うこともできません。
とにかく出生を待つことになります。
(3)高齢者や障害者
相続人の中に認知症や精神障害者がいる場合、
成年後見人、保佐人、補助人の
選任手続が必要となります。なお、分割協議者が
後見人等に就任した場合には
さらに
特別代理人の選任手続も必要です。
(4)被相続人の孫が養子となっていた場合
被相続人の死亡によって実の両親が親権者となるのではありませんので注意が
必要です。この場合には
未成年後見人の選任をしなければならないことになり
ます。
4 包括受遺者
包括遺贈とは、「遺産の何分の1(ないし全部)を甲に与える」 というように、 遺産
の全部又はその分数的割合を指定するにとどまり、 目的物を特定しないでする遺贈
のことをいいます。
包括遺贈は、被相続人の地位の割合的承継であり、この点で、相続分という割合に
おいて被相続人の地位を承継する相続人と共通することから、「包括受遺者は、相
続人と同一の権利義務を有する」と規定されています。
このことから、遺言によって包括遺贈を受けた人(包括受遺者)がいる場合には、
その人も遺産分割協議に参加すべきことになります。
5 相続分の譲受人
相続分というものは他者に譲渡することができます。相続分を譲り受けた者は、
相続人の地位を引き継ぐことになりますので、当然、遺産分割協議に参加すること
ができますし、相続分の譲受人の参加していない遺産分割協議は無効となります。
6 不在者財産管理人
まず
家庭裁判所に対し不在者財産管理人の選任を求めなければなりません。
さらに遺産分割協議に参加するためには、その参加について
家庭裁判所の許可を
受けなければなりません。
7 本来法定相続人であるが特別な事情がある場合
(1)遺産分割協議後に認知された非嫡出子
この者は価額賠償のみできるとされています(民910)。
従って遺産分割協議書に記載された日が認知された日より前であれば、その非嫡出
子の同意書等の添付なくして遺産分割に基づく相続登記ができるというのが登記先
例です。
ただしこれは、被相続人である母の遺産分割協議がなされた後に非嫡出子の存在が
明らかになったという場合には適用されません。この場合には非嫡出子を参加させ
ないでなされた
遺産分割協議は無効であり、改めて参加させた上で分割協議をしな
ければならないことになります。
(2) 相続欠格者・被廃除者・遺産分割後の親子関係不存在確認の訴え等により相続
開始時に遡って地位を喪失した者がいる場合
父が火災で死亡したので
遺産分割協議をしたが実はその火災は相続人である二男
の放火によるものであったといった場合です。二男は相続欠格者であり、このよう
な者が参加した
遺産分割協議は無効となりますが、しかし相続順位に変更をきたさ
ないような場合には、真正な相続人全員が参加している以上遺産分割を無効とする
には及ばず、その二男から相続回復請求権により遺産の返還を求め再分割すればよ
いとされています。
(3)遺産分割後に
相続人が判明した場合
遺産分割協議が成立したが、代襲相続人が1人いたことを忘れその者を除外した
遺産分割であったといった場合です。
一部相続人の参加していない遺産分割協議ということでこの遺産分割協議は無効
とするのが判例実務です。従って改めて協議することになりますが、その代襲相
続人が現金の授受で了解するならば当初の遺産分割協議を追認することはできる
とされています。
相続・遺産分割トップページへ戻る方は、こちらをクリックしてください。