内縁の配偶者には相続権はありませんので、以下のような保護が図られています。
1 特別縁故者制度(
民法958条の3)
相続人がいない場合に、
家庭裁判所への申立てによって財産分与を受けられる制度
です。
2 居住用建物の賃借権の承継(
借地借家法36条)
相続人がいない場合に、建物賃借権を承継できる制度です。
3 独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構が行う簡易生命保険のうち、
終身保険・定期保険・養老保険・財形貯蓄保険の保険契約において保険契約者が
保険金受取人を指定していない場合には、内縁配偶者は他の相続人に先立って
保険金の受取人になるとされています。
以下、詳しく説明します。
■ 賃借権(内縁の妻・事実上の養子)
⇒ 内縁の妻や事実上の養子の場合には、判例上援用理論が確立されています。
これは、これらの者は生前は被相続人の賃借権を援用することにより居住できたの
であるから、被相続人死亡後も相続人の権利を援用することによって居住できると
するもの(相続人よりも現に居住していた内縁の妻等の居住権を優先するというこ
とです)
⇒ ただし、賃貸借契約の当事者は相続人であるので賃貸借契約を合意解除された場合
は問題となりますが、このような場合には信義則上援用権者には対抗できないとす
る判例があります。
⇒ なお法定相続人がいない場合の賃借権の承継については
借地借家法36条参照
■ 特別縁故者への財産の分与
相続人が不存在の場合に、生前特別な縁故者と認められる者からの請求によって財産
を分与する制度
■ 特別縁故者とはどのような者か
⇒ 内縁の配偶者・事実上の養子
⇒ 相続人ではないが、血縁上も近い関係にあり、生活をともにしていたおじ・おば
⇒ 先妻の子と後妻
⇒ 地方公共団体・宗教法人・学校法人・公益法人
⇒ 妾関係にあった者(公序良俗に反するとして判例は否定的)
■ どのような財産が分与の対象となるのか
⇒ 生命保険
⇒ 死亡退職金・遺族給付
⇒
共有財産(これも特別縁故者への
財産分与が優先する。)
⇒
不動産の賃借権(
借地借家法36条)
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