【 新規の会社設立 → 吸収分割による事業承継 】
他人の事業を引き継いで、自分で事業を行う場合の手続きです。
株式譲渡のみによる手続きでは、会社の全事業が対象になりますが、この手続き
では、会社の一部の事業を対象にすることになります。よって、対象となる会社
の事業のうち、採算が取れる事業や成熟した事業を承継することが可能です。
新規の会社設立の段階で、対象事業の価値に相当する資本金として、現預金を準
備し、吸収分割手続きの段階で、その資本金を対価として分割会社に交付します。
まず、
新規の会社を設立し、その後、吸収分割により対象事業を承継します。
承継する事業に関する有形無形の資産負債すべてが対象です。
偶発債務・簿外債務も承継することになります。
偶発債務や簿外債務のリスクを回避するためには、
事業譲渡の手続きが必要です。
新規の会社設立 |
28~29万円 |
28~29万円 |
吸収分割 |
債権者保護手続きあり |
債権者保護手続を省略 |
登録免許税 |
60,000円 |
60,000円 |
官報公告掲載実費 |
約220,000円 |
約150,000円 |
報酬(消費税別) |
270,000円 |
250,000円 |
完了謄本、郵送代 |
数千円 |
数千円 |
吸収分割のみ総計 |
55~56万円 |
46~47万円 |
総 計 |
83~85万円 |
74~76万円 |
※ 債権者保護手続きの省略は、分割会社が承継債務を併存的(重畳的)債務引受
をし、かつ、物的分割(分社型分割)による方法で可能です。承継会社において
は、債権者保護手続きの省略はできません。
※ 基準日設定の公告が必要な場合、1社あたり、報酬1万円(消費税別)および
公告掲載実費各約3万円がかかります。
※ 商号続用による免責の登記が必要な場合は、報酬2万円(個別依頼の場合3万円、
消費税別)および
登録免許税3万円がかかります。
※ 会社分割においては、
定款の認証は不要です。
※ 独占禁止法、金融商品取引法、許認可(宅建業、建設業、銀行業、ガス事業、
電気事業、道路運送業等)の再取得や届出(倉庫業、電気通信事業等)を検討し
なければいけません。
※
登録免許税については、吸収分割に関するものです。税率は0.7%になりますが、
上記金額は最低金額で表示しております。
※ 分割会社の登記事項(商号・目的・公告方法・発行可能株式数・株式譲渡制限
の変更、代表者交替含む役員変更、本店移転)があれば別途報酬および登録免許
税がかかります。
※ 承継事業に関する
不動産に関しては、
所有権移転の登記をすることになります。
登録免許税2.0%(租税特別措置法第81条第1項により、平成24年3月31日まで
1.8%に軽減)がかかりますが、不動産取得税はかかりません。
よって、普通に
不動産を売却するよりも、会社設立+吸収分割の方が税が安くな
ることもあり、会社所有
不動産の売却スキームとして使われます。
【 吸収分割の手続き 】
秘密保持契約の締結
⇩
分割会社・承継会社の定款、謄本、株主名簿(株主構成)、貸借対照表(B/S)
の準備
⇩
吸収分割契約書案の作成
⇩
吸収分割契約の締結
⇩
分割会社の労働組合・労働者との事前協議
⇩
分割会社・承継会社の本店に吸収分割契約書等を事前備置
(作成後または株主総会開催の2週間前から分割後6か月が経過するまで)
⇩
取締役会の開催
吸収分割契約と定款の承認
基準日設定の承認(株主総会まで2週間以上空ける)
株主総会招集事項の承認
⇩
分割会社・承継会社の基準日公告
⇩ ⇩ ⇩
株主総会の招集手続き 債権者保護手続き 労働契約承継の手続き
⇩
官報公告、個別催告 労働者に通知
⇩ (最低1か月必要) (株主総会迄2週間以上空ける)
⇩ ⇩
株主総会の開催 異議があった場合の対応
吸収分割契約を承認
⇩
株主・新株予約権者への通知または公告 ⇒ 反対株主等からの買取請求への対応
(効力発生日まで20日以上空けること)
⇩
分割期日の到来
⇩
分割会社・承継会社の本店に法定書面を事後備置
(効力発生日から6か月間)
⇩
法務局への登記申請日
⇩
登記の完了
⇩
分割会社・承継会社の謄本取得
⇩
承継会社が分割会社の商号を引き続き使用する場合(会社法第22条)には、
免責の登記をします。
⇩
承継対象となった
不動産の移転登記の手続き
分割会社・承継会社の株主総会議事録
分割会社・承継会社の株主リスト
吸収分割契約書
官報公告および個別催告書面
債権者異議に関する書面
計上証明書
分割会社の謄本、印鑑証明書(法務局管轄が同一でない場合)
分割会社と承継会社の委任状
承継事業に従事する労働者を会社分割により承継する場合には、本人の同意は
不要です。
ただし、従事するにもかかわらず承継しない場合に、労働者が異議を申し立て
れば承継することになります。
承継しない事業に従事する労働者を会社分割により承継する場合には、本人の
同意が必要です。本人が異議を申し立てれば承継されないことになります。
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